
まず、それらの市民セクターの組織管理を人的資源管理、資金管理、アウトプットとしての財・サービス管理、情報管理のそれぞれの側面から、営利組織のそれらの管理側面と比較しながら分析し、管理過程における行政との連携、あるいは地域社会との関係を検討、考察する。さらに事例研究としてヒアリング調査を実施した若干の非営利組織の実態を紹介しながら、現実に市民セクターが直面している諸問題をまとめてみたい。 2. 市民セクターの組織管理
市民セクターすなわち非営利組織のマネジメント及び組織管理についての先行研究では、公的組織と私的組織の比較研究が参考になる。公的組織の管理論は、組織の効率的な管理という点においては、私的組織の管理論すなわち企業経営論と多くの視点を共有する。経営組織論、経営戦略論などの視点から、肥大化による効率性の低下や官僚制の弊害などを指摘する、一方で近年私的組織の研究も、公正性、公益性、社会性、安定性等の公的組織特有の側面を分析軸として積極的に取り入れ、議論するようになった3)。それは企業を中心とする私的組織の市民社会に対して果たすべき社会的責任が増大しているからである。だとすると、市民セクターは公的組織と私的組織の中間的組織として位置づけることが可能であるし、その公的側面と私的側面をもちあわせているといえよう。 したがって、本章では市民セクターの組織管理を以下のような管理側面から分析、考察する。 1) 人的資源管理 2) 資金管理 3) サービス管理(市民セクターが社会に対して提供するもの) 4)情報管理 これらの側面からそれぞれ市民セクターにおいて特徴的なもの、行政との連携において重要な視点、地域社会との連携において重要な視点等、について考察する。 (1) 人的資源管理 市民セクターに限らず、あらゆる組織において人的資源は不可欠である、そして人的資源にかんしては、機械設備や施設等一定のパフォーマンスを約束されている資源とは違って、その周りの環境、人間関係によって、またその個人の潜在的能力、意欲によっても、
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